クライアントを失うという経験をしました。
当時の年間売上は2億弱だったので、2割超の売上が吹っ飛びました。
それまで右肩上がりで毎年売り上げは伸びていました。
その顧客のビジネスにとことん付き合い、その分野に集中したことで、
普通に保険代理店をやっているだけより何倍も速いスピードで成長できたことはまちがいありません。
まさしく集中化の恩恵でした。
しかし一方で特定クライアントに売り上げの相当な割合を依存するのは大きなリスク。
その「事件」で身にしみました。
本気で倒産するかもしれないと思いましたし、売上を分散させないとおちおち夜も眠れないと思い、
それからは広く中小企業や個人顧客もターゲットにしようと決めました。
悪いことは続くもので、
その直後、今度は港北ニュータウンに出店していた住宅ローン店舗が突如売上げ不振に陥り、
毎月大赤字を出すようになりました。
気づけば神奈川県内に次々と新規住宅ローン店舗ができ、
当社店舗周辺にも競合店が取り巻くように出店していて、
相当数の顧客を持って行かれていました。
やむなく首都圏での住宅ローンビジネスからは一度撤退し、
しばらくは保険事業に集中して体制を立て直そうと考えました。
そこで当時神奈川でもっともローン売り上げが大きかった運営法人に
当社の港北NT店の譲渡を持ちかけたところ、
全く意に反して、逆に神奈川の店舗を買わないか?と提案を受けました。
その法人は本社が九州にありましたが、全国に分散出店するのは非効率なため、
九州地区に特化し、九州No.1を目指しつつ、もっと生産性を高めたいということでした。
「ランチェスターの法則」という言葉が会話の中に何度も出てきていました。
「昨日の敵は今日の友」ではありませんが、
数日前まで意気消沈していたことも忘れ「こんな話ラッキーな話は中々ない」と奮い立ちました。
元々の当社店舗に譲渡を受ける3店舗が加われば、神奈川では一気にトップシェアになれる!
そう思ってリスクを承知で飛びつきました。
それから2年。
マイナス金利の恩恵もあり、住宅ローンビジネスは順調に推移し、
今では保険事業と並んで当社収益の柱になりました。
営業リソースを保険以外にも大きく割いたことで、管理ロードは増しましたし、
保険事業だけ見れば成長はやや鈍化下かも知れませんが、
全社売上は3年前の倍以上になりましたし、何より経営の安定感が増しました。
一方、当社に店舗を売ったその法人は、熊本にある本店が今回の地震で被災しました。
幸いにして直接的なダメージは少ないそうですが、問題はこの後の住宅ローン需要がどうなるか・・・。
恐らく当面の間は住宅建築や販売の市場は冷え込むでしょうし、
被災地向けの公的な特別融資制度等が行われれば、
当面は民間ローンの出番は回ってこないかも知れません。
首都圏店舗を残しておけば、全体で損失をカバー出来たかも知れませんが、
集中戦略は完全に裏目に出てしまったようです。
ある分野に経営資源を集中すべきか
あるいはリスクを考えて分散化・多角化を図るべきか
どっちがよりゴールに早く近づけるのか。
経営の教科書には載っていません。
「神のみぞ知る」です。
だから経営は面白いと言えますし、怖いとも思います。
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