「転ばぬ先の杖」という言葉がありますが、残念ながら保険はその杖になり得ません。
転んだ後の手当て、つまり被ってしまった損失に対するてん補はできますが、そもそも転ばぬようにする事は出来ないからです。
更に言えば、保険でてん補できる損失には、てん補できる損失の種類、及びその金額の双方に限度があり、今回の東北関東大震災の様に、地震や津波で被った損失については、全額補償する手だてがありません。特に企業の場合は、国が再保険で引き受けてくれる地震保険制度には入れず、民間の保険会社も一部の会社にしか充分なカバーは提供できませんから、殆どの事業者は、全くカバーされてなかった筈です。
また、仮に物的損害はある程度てん補されたとしても、貴重な人の命や、弱体化してしまった組織、取引先網、バックアップされてなかった情報など、金銭には置き換えられない資産もたくさんあります。これらの物は一度失ってしまったら、なかなか再構築できません。転んでしまった後、立ち上がれない人、企業がどれだけあることでしょうか。
今改めてリスクマネジメントの重要性を感じます。中小企業レベルでも、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)を立案し、万一に備えておく必要があると痛感しています。しかしながら、現状では中小企業レベルで、BCPを作成しているところは殆どありません。専門家が非常に少ないということがその理由です。
BCP作成には、財務分析の能力とリスクを定量化するための鑑定能力、定量化されたリスクの対処案を作成するコンサルティング能力が必要です。保険会社にも対応できる人材は殆どおらず、リスクマネジメント系の大手シンクタンクにそれぞれ数名ずつ在席している程度ではないでしょうか。 もっと国が本腰を入れて、専門家の育成を行っていくべきではないかと思います。
なお、私が取得を目指している中小企業診断士の活動領域は、上記と重なります。財務分析とコンサルティングのスキルは当然身に着けるべきのものなので、そこにリスク定量化と保険を核とした、リスク対応策の構築スキルが加われば、充分に活動できます。保険会社と診断士のネットワークを活用し中小企業レベルでのBCP構築を積極的に行っていく必要があるのではないかと思っています。
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